トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーについて知る

診断

監修:信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授 関島 良樹 先生

監修:信州大学医学部 脳神経内科、
リウマチ・膠原病内科 教授 関島 良樹 先生

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他の病気と診断されることも多いトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー

多くの医療機関を訪ねても、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーと診断されないことも。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーはさまざまな症状がみられるために、他の病気であると診断されるなどして、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーと診断されるまでには長い年月を要することがあります。はっきりした病名が分からないまま、多くの医療機関を訪ねた経験のある方もいらっしゃいます。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは末梢神経やさまざまな臓器にアミロイドがたまっていき、緩やかに症状が進んでいく病気です。そのため、できるだけ早くトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの症状に気づき、神経内科などで診断を受け、治療を開始することが重要です。
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの方が診断されることがある病気としては、整形外科にかかることが多いものでは、頚椎症、腰椎症、手根管症候群などがあります。また内科・神経内科にかかることが多い病気としては、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)、糖尿病性の末梢神経障害などがあります。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーと症状が似ているため、鑑別する必要のある病気

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トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断は?

全身の症状を問診などによって確認した後、次のような検査によって、体内へのアミロイドの沈着と、TTR遺伝子の変化(変異)を確認して、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーと診断されます。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、下記の①〜③が認められる場合に診断される。

①感覚障害、運動障害、自律神経系の障害、心障害などの症状

②体内へのアミロイドの沈着の確認と、免疫化学染色によるアミロイドの原因タンパク質の同定

③TTR遺伝子の変化(変異)の確認

主な検査

生検(生体組織検査)

アミロイドの沈着と、その沈着しているアミロイドがTTRによるものであるかを確認するための検査です。お腹の脂肪(腹壁脂肪)や胃腸の粘膜、手足などから組織をとって、コンゴーレッド色素で染色し、顕微鏡で調べて判断されます。

遺伝子診断

遺伝子の情報をもとにトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーを診断するために行います。遺伝子カウンセリングと遺伝子診断についてのインフォ-ムドコンセント(十分な説明と同意)を受け、本人の意思が確認された後、遺伝子を検査するための検体(血液など)が採取されます。

※トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの症状がなくても、判断能力のある成人(満18歳以上)で本人が自発的に遺伝子検査を希望し、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの症状や遺伝などの知識についてよく理解し、結果を知った後の将来設計について熟慮しており、診断後の心理ケアおよび治療の体制が整っている場合は、遺伝子検査(発症前診断)を受けることができます。
発症前診断を受けるためには、遺伝カウンセリング外来を受診する必要があります。

診断の流れ

診断の流れ

■まだ診断はされていなくても、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーが疑われる症状がある場合には、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに関して以下の点をよく理解しておきましょう。

ご自身の診断のため

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは遺伝性の病気であるため、家系に似たような症状の人がいるかどうかを医師に伝えることが重要です。祖父母や両親、おじおば、いとこ、兄弟姉妹など、家系の人々が経験された病気や症状などについて、医師に詳しく伝えることで、より早い診断に結びつくことがあります。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは末梢神経障害を引き起こしますが、人によってさまざまな症状が合わさって出現しますので、少し自分の症状と違うなと感じても、医師に伝えておくとよいでしょう。

ご家族の健康のため

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者さんのご家族のなかにも同じ病気の方がいらっしゃる可能性があります。気になる症状がある場合には、できるだけ早くお近くの神経内科を受診しましょう。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは進行性の病気であるため、早期診断が重要です。早く診断されれば、それだけ早く必要な治療とサポートが受けられます。

※トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは「全身性アミロイドーシス」として難病に指定されており、難病医療費助成制度の対象です。

医療費助成についてはこちら

医療機関で、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに関してできるだけ多くの情報を入手しましょう。

診察の際には、医師からの説明をよく理解したり、詳しく質問したりするために、どなたかに同席してもらうか、同席されない場合には重要な内容をメモするために筆記用具などを用意しておきます。診察にそなえて、あらかじめ家族歴に関する情報や、過去にかかった病気、最近の体調をメモしたものなど、問診に役に立つ情報を用意しておくとよいでしょう。

ご自身の症状を記録できる「わたしの体調記録シート」ご自身の症状を記録できる
「わたしの体調記録シート」

コラム

早期診断のためにご自身とご家族ができること

 

「家族も発症するかもしれない―」そう心配になる患者さんは少なくありません。自分ひとりで悩まずに、まずは主治医にご相談ください。遺伝に関するカウンセリング(遺伝カウンセリング)を受けられる医療機関もあります。また、遺伝子に原因があると分かった場合、遺伝子を共有している可能性のあるご家族(血縁者)は、その遺伝子を持っているかどうかを調べる「発症前診断」を受けることもできます
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、原因遺伝子を持っていても必ず発症するわけではありませんが、発症後の早期診断によって治療が早く受けられます。そのため、もしご家族が発症したらすぐに気づいてあげられるように、気になる症状がないか日ごろからチェックすることも大切です。

ご家族の症状を記録できる「家族の体調記録シート」

ご家族の症状を記録できる
「家族の体調記録シート」

※トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの症状がなくても、判断能力のある成人(満18歳以上)で本人が自発的に遺伝子検査を希望し、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの症状や遺伝などの知識についてよく理解し、結果を知った後の将来設計について熟慮しており、診断後の心理ケアおよび治療の体制が整っている場合は遺伝子検査(発症前診断)を受けることができます。発症前診断を受けるためには、遺伝カウンセリング外来を受診する必要があります。

※トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、遺伝性ATTRアミロイドーシス、ATTRvアミロイドーシス、hATTRアミロイドーシス、ATTR-FAP、TTR-FAP、FAPと呼ばれることがあります。

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